広告業界を目指す愛知県下の大学生・専門学校生を対象に、第一線で活躍する3名の講師による実習を交えた2日間の広告現場を学ぶ実践的な広告ワークショップ『第7回(令和元年度)愛広協実践広告ワークショップ』を開催しました。
第1講座 令和2年1月18日(土)と第2講座 2月22日(土)の2回開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、残念ながら第2講座は、延期としておりました。夏を迎える頃には、実開催を目指しておりましたが、残念ながら、コロナ禍はおさまらず、大変異例ではありますが、第2講座の課題に対する学生の皆さんのプレゼンは、中止とし、プレゼン資料によるオンライン審査にて各賞を決定致しました。
審査は、令和2年7月22日に、4名の審査員の方々とZOOMシステムを用いて開催しました。長時間に及ぶ大変熱心な議論の末、12名の方々が受賞されましたので、ここで発表致します。
また、例年は、『AICHI AD AWARDS 学生広告賞』として贈賞しておりましたが、今回は、『AICHI AD AWARDS』も中止と致しましたので、このコンペティションの名称も『愛知広告協会 学生広告賞 2020』とさせて頂いております。
第7回(令和元年度)
愛広協実践広告ワークショップ―広告を仕事にする
一般社団法人 愛知広告協会
株式会社新東通信、公益社団法人全日本広告連盟
広告業界を目指す人材の育成を目的とし学生を対象とした広告ワークショップ、講座内では実践的なテーマを提示しレコンペティションを実施する、広告業界の"今"を学ぶ講座の開設
株式会社 新東通信 名古屋本社
第1講座[1月18日(土) 9:50~17:30]
三菱電機(株)1名、クリエーター2名の3名の講師から広告業界の現在の環境をレクチャー、プレゼンテーション課題を発表。
※下記の通り「第2講座」を計画しておりましたが、新型コロナ感染症のため中止。
第2講座[2月22日(土) 9:50~16:00]
学生プレゼンテーション、講評
公開応募による、愛知県下の大学生、専門学校生11校の学生
第1講座:34名
第2講座:0名(中止)
《第1回講座[1月18日(土)]》
IHクッキングヒーターのコミュニケーション戦略とその展開方法
ex.自分の身近な人(お母さんや友人)に勧めるとしたら?
《講師及び審査員》
三菱電機株式会社
宣伝部BtoCコミュニケーショングループ グループマネージャー
1989年三菱電機株式会社に入社。BtoB分野「半導体」「電力事業」等のコミュニケーション戦略企画立案及び推進を担当。97年から全国10拠点の各地区におけるエリアコーポレートコミュニケーション活動推進を担当。
99年よりBtoC分野「冷蔵庫」「ルームエアコン」「ジャー炊飯器」等、コンシューマー向け製品のコミュニケーション戦略企画立案及び推進を担当。2013年よりアイプラネット株式会社に出向、主に展示会の企画立案から運営までに従事。
16年に宣伝部BtoCグループに復職、家電製品群のコミュニケーション戦略企画立案に取り組み、19年より現職。
株式会社博報堂
ブランド・イノベーションデザイン局
エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/スダラボ代表
1967年新潟県生まれ。1990年博報堂入社。アートディレクター、CMプランナーを経て、2005年よりインタラクティブ領域へ。2014年スダラボ発足。同ラボ第1弾「ライスコード」で、アドフェスト・グランプリ、カンヌ・ゴールドなど、国内外で60以上の広告賞を受賞。2015年スダラボ第2弾「トーカブル・ベジタブル」、第3弾「パニックーポン」も、アドフェスト、スパイクス・アジア、アドスターズ、ONE SHOWなど多数受賞。2015年大塚製薬ポカリスエット「インハイ.TV」で、ACCインタラクティブ部門ゴールド受賞。2016~17年 ACC賞インタラクティブ部門・審査委員長。2017年 東京広告協会「広告未来塾」第1期塾長。著書「使ってもらえる広告」アスキー新書。
株式会社電通中部支社
顧客ビジネス局 グループ・クリエーティブディレクター
名古屋の山崎デザイン事務所に10年間在籍。2008年電通中部支社入社。近年の仕事は、三和交通・TAXI WHISTLE(笛を吹けばタクシー参上!デバイス)/中京TV・乳がんキャンペーン/藤田医科大学/シヤチハタ/葵鐘会「Mother Book」/マクドナルドハウスを名大病院へ2億円募金CP/他多数。賞歴は、カンヌライオンズ・グランプリ他、国内外で多数。カンヌ審査員等多数歴任。
《審査員》
株式会社新東通信スケッチ 代表取締役
プロデューサー/クリエイティブディレクター/コピーライター
1959年大阪生まれ。 「企業・団体・個人のビジョンを描く」ということをテーマにした「スケッチ」という会社を設立。企業のコミュニケーションにおけるコンサルティング、各種ブランディングを中心にしたクリエイティブ・ビジネスに携わっている。名古屋造形大学「非常勤講師」、名古屋コミュニケーションアート専門学校「教育課程編成委員ほか」、宣伝会議コピーライター養成講座「講師」、学生団体ISIK「顧問」、PRINCESS SAMURAI of JAPAN あいち戦国姫「事務局長」、名古屋ナモ締め「事務局」など。
石塚 美代子
三菱電機株式会社
ご応募いただきましたみなさん、本当にお疲れ様でした。
そして、みなさんの熱意のこもった力作について、直接のプレゼンを受けられなかったことは本当に残念でした。きっと、プレゼンをいただいていたら、少し違った見方となっていたのかもしれません。
今回のテーマを選定する際には、弊社内でも侃々諤々、果たしてみなさんにとってあまり馴染みのないであろう、また販売ルートも一般の家電品とは少し異なる「IHクッキングヒーター」という製品を選んでいいのだろうか、について議論にもなりました。その上で、あえてこの製品を選んだのは、むしろ日ごろ接点の少ないであろうみなさんの新鮮な視点で本来の力を発揮していただけるのではないかという想いからでした。最終的にみなさんに作品を提出いただいて、この製品にしてよかったと思っています。
私の審査のポイントは、「考え方」「表現」「プレゼン」「施策」の4つの観点で実施させていただきました。もちろん、今回は残念ながら「プレゼン」を直接お受けできませんでしたので、提出いただいた資料から判断をさせていただきました。三菱電機賞として選ばせていただいた関戸さんの作品は、「考え方」の整理をしっかりされており、そこから導き出した「表現」「施策」の案にしっかりつながっていたこと、総合的な視点で選ばせていただきました。
最後になりましたが、応募いただいたみなさん、そして愛知広告協会をはじめ関係者の皆様に、私自身にとっても、三菱電機としても、本当に貴重な経験をさせていただけたことにあらためて感謝申し上げますと共に、ぜひ、社会人となったみなさんとどこかで一緒に仕事をさせていただきたける日を楽しみにしています。みなさん!これからも益々がんばって下さい。
須田
和博
株式会社博報堂
ブランド・イノベーションデザイン局
参加者の皆さま、まずは、大変おつかれさまでした。1月の講義の時点では予想だにしなかったコロナの急展開と収束の見えなさで、皆さんに直接プレゼンしてもらう機会が実現せず、企画書での審査となりました。人によってはプレゼンでのトークを前提に、企画書にすべての説明を書き込んでいない方もいましたが、推測して審査させていただきました。
今回の課題「IHクッキング ヒーター」は、非常に難題だったようで、アプローチに苦労した様子が企画書群からにじみ出ていました。そんな中でも上位に残った方々の案は「この商品をどうとらえたか?」の考えが一読して、しっくりと納得いくもので、かつアウトプットの表現や施策案がとても丁寧に作られていたものたちです。
特に須田の印象に残った提案は、以下の三者の方でした。小倉万実さんのガスユーザーにホットカイロを配るなどの「いじわるなノベルティ」のアイデア。鈴木有朔子さんの「サプライズ・ハウス」の母ユーザーに対して母の日に父と子からアプローチするという作戦。江利山未悠さんの「IH調理専門中華料理店」のIHは火力が弱いという先入観を逆手に取った施策。いずれも、ハッキリとしたアイデアがあり、なるほど!と思いました。
全体に関し難を言えば「切り口」は良いのに、その先がない企画書がけっこう多く、もったいなかったです。プレゼンの最後のスライドを見て「え?これで終わり?ここからなのに…」とか「この良いキャッチから、いくらでも展開できるのに…」と、何度も何度も思いました。落選して悔しい思いをしている方々は、入賞者の企画書と自分のそれとを見比べて、何が足りてなかったのか、付き合わせて復習してみると、大いに成長できると思います。
たくさんのご参加、ありがとうございました。
𡈽橋 通仁
株式会社電通中部支社
今回のオンライン審査をする際、自分の中で最初に決めた審査基準は
①「IHコンロならでは」であること。
②ガスコンロとの違いまで意識したか?
③買うかも(行動するかも)と思わせられるかどうか。
④コンペティションの中での強さ
(ユニークさ/アイデア/オリジナル視点/マネしていないか)等
コンペティションなら、上記④のようにエントリー群の中で目立つことはすごく大切。コンペによっては奇抜でユニークなものがグランプリになることもありますよね。
しかし、今回の課題で④の方向での挑戦はかなり難しいだろうと思っていました。
なぜなら、私もお仕事でコンロ商品を担当させていただいた経験があるからです。
コンロって毎日使う商品。スライスオブライフから商品ストーリーが見えてくるもの。お値段も決して安くありません。
奇抜なアイデアやデザインは目立つ。けど、考えれば考えるほど「共感」とは距離ができてしまい、定着させるポイントの判断が難しかったはず。
審査員全員で話し合った際も、選ぶ時の審査基準をどこにおくかで、長時間の議論になりました。
今回は講評が直接みなさんにお伝えできませんでしたが、私が気になった4案のコメントです。
グランプリ松崎さんの案/
毎日使う商品と子育て世代のスライスオブライフ。ユーモアコピーと商品をつなごうとしています。家族を応援しようとする姿勢のコピーが丁寧で好きです。
準グランプリ鈴木さんの案/
毎日使う商品を「母の日」という1日に軸足をおいた企画が潔かった。サプライズ体験と場の提供がコンテンツ。
三菱電機賞の関戸さんの案/
IHから家族の笑顔アイコン化し、ほっこりするコピーと料理シズル写真で三菱のIH=記号化で記憶にすりこむ手法。
戦略賞の山杉くんの案/
施工時の課題と決定権者のことを考え続けたからこそ、自らの「気づき」でブレークスルー。コロナでの環境下、空気に敏感になっている人は多く「私なら買うかも」と思う視点でした。
岩田 正一
株式会社新東通信スケッチ 代表取締役
第7回目の実践広告ワークショップは、新型コロナウィルスの発生により、過去とはまったく異なるものとなりました。
企画書の提出がありつつも、プレゼンテーションの機会がない。審査会がリモートで行われるというような状況でした。企画書だけで審査を行う中では、やはり「みんながプレゼンテーションする姿を見たかった。」と感じるとともに、そうした緊張する場面もいい経験となるので機会がなくなり残念だったという思いです。
実践広告ワークショップは、オリエンテーション時に企画(プランニング、クリエイティブ)を学び、広告主からの課題を聞き、質問をする、というまさに「実践」の経験をします。
そして、広告主をはじめとした審査員、参加学生の前でプレゼンテーションをするという「実践」を経験することが通常のコンペティションとは大きく異なる点です。
広告業界として、新たな才能を迎えるべく「人材発掘、育成」を目的としています。審査会自体もこれまで経験したことのないリモート審査会。運営側も学生も、例外的な経験をすることになりました。
作品的には、とても、真面目な提案が多かったように感じます。しっかりと、課題を受け止め、現実的に企画をしたように見えます。一般的に言われる「フォアキャスティング」という積み上げ的な発想のものが多かったように思います。一方で「こんな発想があったのか!」「そういう視点があったのか!」という驚きのあるものが少なかったようにも感じました。課題を聞き、大胆な発想で解決策を考え、それを実現するためのプランニングやクリエイティブを考える「バックキャスティング」があってもよいように思いました。若いということ、経験値がないことを、武器にする勇気も大切。真面目も大切なことではありつつ、誰も気づかない「視点」で課題解決するチャレンジする勇気も持てると新たな人材が生まれてくると思います。学生として大きく成長して欲しいと願います。